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任意整理をすると家族にも影響を与える?

借金問題の解決方法のひとつに任意整理があります。任意整理を検討するとき、家族への影響を懸念するかもしれません。家族への影響は少ないものの、全くないわけではありません。ここでは、家族への影響の有無、影響があるとすればどの程度の影響なのかをまとめました。

家族への影響は少ない

任意整理は、家族への影響は少ない手続きです。借金が整理され、家族の暮らしは良い方向に向かう可能性が高いでしょう。任意整理は、経済的に立ち直らせて、生活を再建するためのものです。他の借金整理方法と比較しても、リスクが少ないと言えます。

財産の強制処分がない

任意整理は、財産の強制処分がないため、家族と共有している財産は維持できます。家族の暮らしに影響が及ばない範囲で借金を整理できるため、借金整理方法の中では、最も家族への影響が少ない方法です。

借金を整理すると財産をすべて処分しなければいけないというイメージがあるとすれば、それは「自己破産」のイメージです。債務整理方法には、「自己破産」「個人再生」「任意整理」があります。この中で、財産すべてが強制処分となるのは自己破産です。

任意整理は、「このクレジットカードの借金は整理して、車のローンは整理しない」など、整理する債務を自分で選択可能。家族と共有の車を残す、家族と住んでいる家を残す、といったことができます。

自分が世帯主の場合にもし財産の処分が必要であれば同居家族に影響が生じるでしょう。しかし、任意整理は財産の強制処分がないため、世帯主の任意整理であっても、家族の暮らしに大きな影響を与えることなく債務を整理できます。

官報に掲載されない

官報は、国の政策や国民の権利義務に関する情報が記載されている機関紙です。休日以外は毎日発行されていますが、一般市民が見る機会はあまりないでしょう。個人再生や自己破産の手続きをすると、官報に名前と住所が記載されます。

官報に記載される理由は、債権者などの利害関係者が手続きの開始を知るためとされています。公開情報なので、記載されると知人に知られる可能性はあるでしょう。周囲に知られると家族もそのような目で見られるかもしれません。

しかし、任意整理では、官報への記載がありません。債務整理をしたことが知人や近所の人に知られるリスクは非常に少ないです。家族が周囲から白い目で見られるような心配も必要ないでしょう。

手続き中に資格制限を受けない

「借金整理をすると仕事が制限されてしまうのではないか?」と心配している人がいるかもしれません。

自己破産をすると、破産手続きの開始から免責許可がでるまで、一定の職種の仕事について、制限が発生します。資格制限される職種は、「弁護士、司法書士、税理士などの士業」「旅行業務取扱の登録者、管理者」「生命保険募集人」「警備員」などです。該当の職業に就いていた場合、仕事に影響が生じることから、家族への影響も懸念されます。世帯主の場合は特に影響が大きくなるでしょう。

しかし、これも、自己破産手続きの話です。任意整理では、手続き中に資格制限を受けません。任意整理スタート前と変わりなく仕事が継続できるため、家族への影響も特にないと考えられます。

家族へ影響が少ない理由

家族自身の個人信用情報には記録されない

任意整理をすると、整理した本人の個人信用情報には、事故情報が記録されます。借金整理をすると個人信用情報に「異動」という記録がつき、5年間消えません。「異動」は、金融事故、つまり借金の整理手続きをしたことを示す言葉です。「異動」の記録が残っている期間は、クレジットカードやローンの申し込みをした際の審査で個人信用情報を確認されるため、審査に通らないという影響が生じます。

ただし、記録されるのは、整理した本人のみです。家族の個人信用情報には何も記載されないので、家族がクレジットカードやローンの利用をするときには影響しません。

信用情報とは

信用情報とは、ローンの利用実績の記録のことです。日本には、JICC、CIC、KSCという3つの信用情報機関があり、各金融サービス提供会社はどれかに加盟しています。ローンの申し込みがあると、独自の審査に加えて、信用情報機関に記録されている個人信用情報を照会するのが一般的。各金融機関は、複数の信用情報機関に加盟しているため、どこかの信用情報機関に「異動」が記録されると、どこで申し込んでもローン審査に通らなくなります。

子供の進学や就職には関係しない

借金の整理において最も心配になるのは、子供への影響でしょう。特に未成年のお子さんがいる場合は、進学や就職への影響が大きな心配材料かもしれません。

親の個人信用情報に「異動」が記載されても、子供の進学や就職には全く影響しません。上記の通り、子供の個人信用情報には何も記録されません。また、進学先や就職先が親の個人信用情報を確認することもありません。子供が希望する就職先が銀行などの金融関係だとしても、親の任意整理が影響することはありませんので安心してください。

子供の結婚に影響しない

結婚は、本人同士の意思なので、親の任意整理が影響することは基本的にありません。官報にも記載されず、子供の個人信用情報にも何も影響がないので、知られることはないでしょう。ただし、子供が結婚相手に親の任意整理について話した場合は別です。相手の受け取り方によっては影響が出るかもしれません。結婚への影響は、子供の気持ち次第と言えるでしょう。

家族名義のクレジットカードやカードローンの利用が可能

任意整理をすると、個人信用情報に記録されるため、自分ではクレジットカードやカードローンの契約ができなくなります。現代生活において、クレジットカードが使えないことは不便に感じるかもしれません。

しかし、家族の個人信用情報には影響しないので家族はクレジットカードやカードローンを利用できます。家族名義のクレジットカードやカードローンの「家族カード」を発行してもらうことが可能です。家族カードを利用すれば、インターネットショッピングなどの不便さは解消できるでしょう。

家族に影響を及ぼしてしまうケースもある

家族が借金の保証人のケース

任意整理は、家族への影響が少ない借金整理方法です。しかし、家族に影響してしまうケースもあります。そのひとつが、家族が借金の保証人になっているケースです。

本人の借金を整理するとき、連帯保証人がいれば、保証人が請求されます。もし整理しようとしている債務の保証人が家族の場合、家族に請求されてしまうので、大きな影響が生じるでしょう。

家族が保証人になっていて、家族が払えない場合は、保証人になっている家族も一緒に債務整理をしなければいけません。

任意整理は、整理対象の債務を選べるので、家族が保証人になっている借入を整理対象から外すことで、家族への影響を防ぐことができます。

家族だけではなく、親戚や知人が保証人になっている場合も同様に、整理するとその人に請求がいく点には注意が必要です。

家族カードが使えないケース

任意整理すると、クレジットカードが使えなくなります。もし、自分名義のクレジットカードで家族カードを発行している場合、その家族カードも利用停止になることに注意してください。

家族に内緒で任意整理したい人も少なくありませんが、突然家族カードが使えなくなることで任意整理の事実がバレる可能性があります。どうしても家族に内緒にしておきたい場合は、事前に家族カードの利用をやめておく必要があるでしょう。

家族カードが使えなくなるため、家族本人でカードを作ってもらう必要があります。もし家族も任意整理をしていて、まだその記録が残っているなら、クレジットカードの利用が一切できない生活になるかもしれません。

家族自身のクレジットカードやローン審査に影響するケース

基本的には、家族が申し込みをするクレジットカードやローンの審査に、自分の任意整理が影響することはありません。ただし、専業主婦・未成年の学生がクレジットカードやローンを申し込んだ場合は、審査に影響する可能性が高いです。

専業主婦は、本人に収入がないため、配偶者の返済能力で審査されます。配偶者に金融事故歴があると、審査に落ちてしまうでしょう。未成年の学生は親の返済能力が必要です。父親が任意整理したのであれば、母親の情報で審査してもらえば任意整理の影響は受けません。このケースで母親に収入がない場合は、未成年の学生もクレジットカードの審査に落ちてしまいます。

子供の教育ローン審査に通らないケース

任意整理による家族への影響で大きな懸念になるのは、子供の教育ローンです。任意整理すると、以後5年間はあらゆるローンの利用ができなくなります。

子供が高校や大学進学でまとまった費用が必要な場合に利用できる金融商品に「教育ローン」がありますが、任意整理をすると、教育ローンも利用できません。

大切な時期にローンを使えないとなれば、子供にとって大きな影響が発生する可能性があります。任意整理をするということは、経済的余裕はないでしょう。現金で学費をどう工面するかは、事前に検討しておく必要があります。

子供の進学のタイミングでの任意整理は、家族に内緒で手続きを進めるのではなく、家族とよく話し合ってください。

奨学金の連帯保証人になれないケース

教育ローンと同様に、子供の学費に影響するのは、奨学金です。子供自身が将来学費を負担するつもりで奨学金を利用しようと考えることもあるでしょう。奨学金には、連帯保証人が必要です。一般的に利用者が多い独立行政法人日本学生支援機構の奨学金の場合、連帯保証人は、基本的に「父母、もしくは父母に代わる人」です。

しかし、任意整理をしていると、奨学金の連帯保証人になれません。子供が奨学金の利用をする可能性がある場合も、任意整理の手続きを始める前に、家族とよく話し合う必要があります。

家族への影響が少ない任意整理ですが、最も大きな影響があるのは、子供の進学と言えるでしょう。学費をどのように工面するか、家族で話し合った上で、任意整理を選ぶかどうか検討する必要があります。

任意整理を検討する際は家族とも相談を

任意整理は、家族への影響が少ない債務整理方法です。官報にも記載されないので、周りに知られるリスクもないでしょう。家族の個人信用情報にも影響しません。整理した本人は一定期間のローン利用ができませんが、家族カードの利用が可能です。

ただし、家族への影響が全くないわけではありません。特に子供の進学を控えている時期の任意整理は、大きなリスクになる可能性があります。任意整理するときは、後のトラブルを防止するためにも、家族とよく相談しましょう。

任意整理は、一人で考えても分からないことが多いです。家族への影響を少しでも抑えて、スムーズに手続きするためには、専門家への相談も検討してください。

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