公開日: |更新日:
特定調停とは、借金の返済が困難になってきた債務者が経済的再生を行えるようにするために、債務者が負った金銭的債務に係る利害関係を整理する手続きのことです。
特定調停を利用できるのは「経済的に破綻するおそれのある債務者」となっており、この条件に適合しているなら個人か法人かは問われません。
特定調停は、法律に関する十分な知識がなくても申立書などの雛形を使うことで手続きを簡単に行なえます。費用も個人からの申立であれば1社につき500円程度、裁判所への出頭回数も2回程度です。
特定調停の手続は、申立書類の作成からスタートします。必要な書類は、特定調停申立書、財産の状況を示すべき明細書その他特定債務者であることを明らかにする資料、関係権利者一覧表、資格証明書および申立手数料、予納郵便切手です。なお、個人と法人で記載内容が異なるので、それぞれに合わせた書類を手に入れましょう。
必要書類を揃えたたら、申立を行います。申立を行う裁判所は、原則的に相手方となる債権者の所在地を管轄する簡易裁判所です。また、複数の債権者に対して申し立てを行う場合は、いずれかの債権者の所在地を管轄する簡易裁判所にてすべての案件を関連案件として扱えることがあるので、詳細は最寄りの簡易裁判所に確認してください。
申立が完了したら、簡易裁判所から事件受付票の交付と調査期日の指定が行われます。調査期日は申立から約1ヶ月後です。
裁判所側が調停員名簿に基づいて調停員を選定します。特定調停の場合は、調停主任裁判官および原則として2名の非常勤の民間人からなる調停委員が事件担当です。
調査期日になったら、裁判所に出頭します。調停委員から申立書の内容、債務状況の確認、支払原資の有無、援助の有無、今後の生活の見込みなどの確認が行われ、それに基づいて返済計画案を作成していきます。
調査期日の約1ヶ月後に設定されるのが、調停委員と各債権者による第1回調停期日です。調査期日に作成した返済計画案に基づいて債権者との間で返済計画を作っていきます。調停期日に債権者の同意が得られれば、最終的な返済計画を記載した調停調書が発行され、調停調書に基づく返済が行われます。同意が得られなかった場合は、「17条決定」として調停委員会が事件解決のための調停条項を定めた決定を出します。債権者から17条決定に対して異議が出た場合は特定調停は成立しません。代わりに、自己破産・任意整理・民事再生などの手段を検討することになります。
特定調停と任意整理は、どちらも債権者からの取り立てが止まるという点では共通していますが、取り立てが止まる時期が異なります。特定調停は必要書類をそろえて所轄の簡易裁判所に申立をした段階で取り立てが止まるのに対し、任意整理の場合は弁護士に依頼した時点で直ちに取り立てが止まるのです。
また、債務名義の有無も異なります。特定調停の場合は裁判所が作成する調停調書には裁判の判決の同じ効力があり、債務名義があるとみなされます。対して任意整理の場合は、債権者と合意できた場合和解書という書面が作成されますが、これには債務名義はありません。
解決までの時間も異なります。特定調停の場合は調停委員の介入はあるものの基本的には債務者本人が債権者と交渉しなくてはいけないので、解決に時間を要する場合があります。対して任意整理の場合は弁護士がすべての手続や交渉を行うので、債務者本人が時間を使う必要はありません。
特定調停では、申立時点から借金をした当時にさかのぼって金利を利息制限法の上限金利まで引き下げて再計算するので、借金の減額が可能です。
複数の債権者がいる場合、特定調停ならどの債権者と合意するのかを選べます。そのため、特定の債権者だけを外して手続きを行うことも可能です。
特定調停では、取り立てが止まるのは簡易裁判所に対して申立を行った時点です。そのため、必要書類の作成に時間がかかるとそれだけ取り立てが止まるのが遅くなってしまいます。
特定調停は、債権者と債務者の合意がなければ成立しません。そのため、必ずしも調停が成立するとは限りません。