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任意整理と個人再生の違いを知りたい

任意整理としばしば混同されやすいのが個人再生です。任意整理と個人再生は似ているようでさまざまな違いがあるため、自分に合った方法を選ぶことが大切。ここでは、任意整理と個人再生の違いについて見ていきましょう。

任意整理と個人再生は違いが4つある

混同されがちな任意整理と個人再生ですが、両者の間には代表的な違いが4点あります。これらの点を把握しておくと、任意整理と個人再生のどちらを選べばいいか決める際の目安になるので、しっかり覚えておきましょう。

直接のやりとりか裁判所か

任意整理と個人再生の大きな違いのひとつは、直接のやりとりか、裁判所に行くことになるかという点です。

任意整理は利息や遅延損害金をカットすることで、月々の返済額を減らすという手法です。まず、相談者が司法書士や弁護士といった専門家に任意整理を依頼します。相談を受けた司法書士や弁護士は、相談者に対して取り立てを行っている貸金業者と交渉して利息のカットや減額を行います。

対して、個人再生の場合は裁判所を介することで、住宅ローン以外の借金を減額し、借金を原則として3年間で返済するための計画を立てます。借金の大元を大幅に減額することができるのが特徴で、この手続きを行うためには裁判所の許可が必要です。

返済期間の違い

任意整理と個人再生では、返済期間も異なってきます。任意再生の場合は、ケースにもよりますが、おおむね3~5年が主な返済期間となります。任意整理では、この期間で無理なく返済できるように返済プランを立案していくのです。なお、分割回数は最大で60回が目安となっています。

対して、任意整理の返済期間でも借金返済が難しいと判断された場合は個人再生を選ぶことになります。個人再生の返済期間は、原則として3年と定められています。

かかる費用の違い

任意整理と個人再生の費用は、個人再生のほうが大幅に大きくなります。任意整理の費用は、弁護士や司法書士といった専門家へ支払う依頼料です。その金額はおおむね、安い場合で2~3万円、一般的には4~5万円ほどかかります。

対して、個人再生の場合は30~50万円ほどの費用が必要となります。さらに、自宅を維持したい場合は住宅ローン特則という制度を利用することになり、その場合は追加で5~10万円ほどの費用が必要です。

周りに知られるかどうか

周りに知られるかどうかも、任意整理と個人再生の大きな違いです。任意整理の場合、手続き開始時もしくは完済時に信用情報機関に5年間事故情報が掲載されます。なお、どの時点から期間を計算するかは信用情報機関によって異なります。

対して、個人再生の場合の信用情報機関に事故情報が掲載されるタイミングは、任意整理と同じ手続き開始時もしくは完済時です。しかし、掲載期間は個人再生のほうが長く、5~10年となっています。

任意整理がおすすめのケース

個人の事情や希望によって、任意整理と個人再生のどちらが適しているかは変わってきます。ここでは、どのような人が、任意整理と個人再生のどちらに向いているかを見ていきましょう。

家族に知られたくない場合

家族に知られずに借金の軽減をしたい人は、任意整理がおすすめです。個人再生は「民事再生法」という法律に基づいた裁判手続きであり、手続きを行うためには家計収支を証明するための資料提出が求められます。そのため、必然的に個人再生を行うと家族に知られてしまうのです。ちなみに、自己破産の場合も同じです。裁判手続きなので家計収入を証明するための資料提出が求められるので、家族に内緒で手続きを行うことはできません。

対して、任意整理ならほとんどの場合、債権者に対して資料の提出が求められることはありません。そのため、家族に内緒で手続きしたい場合は、任意整理のほうがおすすめです。

何度も足を運べない場合

人によっては仕事や育児が忙しく、何回も事務所や役所に足を運べないという場合もあるでしょう。そうした人にも任意整理がおすすめです。

裁判所などの役所を通した法律手続きの多くは、話し合いや書類提出のために何度も出向かなくてはいけません。しかし、任意整理なら債務者と債権者が直接話し合いを行うという流れなので、通常は話し合い1回のみで終了となります。

これに対して、個人再生は裁判所が絡むこともあり、手続きは複雑かつ厳格なものです。そのため、裁判所はもとより、事務所にも何回も足を運ぶ必要があります。また、大量の書類を揃える必要もあるので、個人再生は任意整理と比べて、非常に手間がかかる手続きなのです。

外したい債権者がある場合

一口に「債権者」と言っても、車のローンや住宅ローン、または友人知人からの借り入れなど、その種類はさまざまです。そうした債権者の中から除外したいものがある場合には、任意整理が適しています。任意整理なら、対象とする債権者を選んで、必要のない債権者は除外することができるからです。

対して、個人再生の場合は債権者を選ぶことはできません。例外として、住宅ローンは外せることもありますが、それ以外の車のローンや保証人付きの借金などは基本的にすべて対象となります。

個人再生がおすすめのケース

基本的には、まず任意整理を考えましょう。任意整理が何らかの事情で難しい場合に個人再生を行うことになります。

任意整理に応じてくれない場合

基本的に、個人再生は債権者が任意整理に応じてくれない場合に行われます。任意整理を希望していても、取引期間が短いなどといった理由で債権者が応じてくれない場合は任意整理ができません。任意整理は、あくまで債務者と債権者のあいだで和解と合意が取れたときにのみ成立する手続きなのです。

対して、個人再生は裁判所の認可が下りれば、法律の規定によって強制的に債務を減らすことができます。もちろん債務者には決議に反対する権利はあるものの、過半数の反対が必要です。そのため、よほどのことがない限り個人再生が行われないということはないと考えていいでしょう。

そのため、任意整理が難しいと判断された場合でも、個人再生を試して見る価値は十分にあると言えるでしょう。

高齢だったり仕事を辞める可能性がある場合

任意整理では、基本的に「できる限り長い返済期間を設けることで無理なく返済できるようにする」という姿勢で話をまとめることになります。しかし、債務者が高齢だったり、仕事をやめて収入が減少・途絶してしまう可能性が高い場合には、返済期間を長くすることで、返済が不可能になるリスクが発生します。そうした場合には、任意整理よりも個人再生の方が現実的な選択肢となるのです。

今後も長期的に安定した収入が得られる可能性が高い場合は、任意整理でできるだけ長い返済期間を設定して、無理のない完済を目指すことになります。そのため、任意整理は若い世代であるほど、収入が安定しているほど、または健康状態に問題がないほど債権者からの反対が出にくく成立しやすくなるのです。逆に、高齢、収入が不安定、健康状態に問題があるといった場合は個人再生の方が適しています。

差押えされてしまっているとき

場合によっては、任意整理や個人再生を行う前に、給与や財産の差押さえを受けていることもあるでしょう。そうした場合は、任意整理よりも個人再生の方が適しています。なぜなら、個人再生の開始が決定されると同時に、差押えの手続きが停止されるからです。そのため、給与の差押さえなどを受けているときに個人再生をすれば、給与の差押さえの手続きが中止されます。任意整理の手続きが終わった時点で差押さえられていた分の給料をまとめて受け取ることができます。

まとめ

さまざまな理由で借金の返済が難しくなった場合は、任意整理もしくは個人再生の手続きを行うことになります。任意整理は債権者と直接交渉して月々の返済額を減らす手続きです。対して、個人再生は裁判所を通した手続きとなります。また、任意整理は3~5年での返済を目指しますが、個人再生での返済期間は原則として3年です。ほかにも、手続きにかかる費用は個人再生のほうが圧倒的に大きい、信用情報機関に掲載される期間も個人再生のほうが長いといったような違いがあります。

任意整理と個人再生のどちらが適しているかは、ケースによって異なります。このサイトでは主に任意整理をしてくれる法律事務所を紹介しているので、任意整理を考えている人はぜひ参考にしてみてください。

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