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債務整理には「任意整理」「個人再生(民事再生)」「自己破産」「過払い金請求」など、目的と手段の異なる方法がいくつかあります。
ここではその中でも「任意整理」について、その詳細やメリット・デメリット、向いている人・向かない人について分かりやすくご紹介します。
任意整理は債務整理の一種。
自己破産のように借金をゼロにすることはできませんが、将来かかるはずだった利息をカットし長期分割払いで返済することで、月々の支払い額を減らすことができます。
お金を貸した側と借りた側の交渉・和解で手続きが完了するため、他の債務整理のように裁判所を通す必要はありません。そのため、手続きにかかる手間も比較的少なくて済みます。
任意整理のメリットは、大きく分けて以下の6点です。
借金は元金を返さない限りなくなりません。任意整理では、遅延損害金や将来発生する利息を免除してもらい、残りの金額を確実に返済することになります。
利息が返済額を占める割合が大きく、毎月返済しているのに元金がなかなか減らない状況に陥っている人も少なくありません。
例えば利率が年15%だとすると、100万円を借りて3年で返済した場合は、単純計算で総返済額は約125万円に。利息だけで25万円近くかかっているのです。
借金を返しても返しても返し終えない感覚に陥る原因は、この利息にあるといえるでしょう。
将来の利息を免除してもらえば返済総額が減り、返済のゴールが見えてきます。
「利息ばかり払っていつ返済が終わるか分からない」といった不安がなくなり、生活の再建のめどをつけられるのは大きなメリットといえるでしょう。
裁判所の判断が不要な債務整理は任意整理だけです。債権者(お金を貸す側)と債務者(お金を借りた側)との話し合いで、借金を整理する手続きが進みます。
一方、他の債務整理方法である「自己破産」「個人再生」では裁判所が間に入り、借金の減額またはゼロにする是非を確認します。手間も時間もお金もかかりますし、許可が下りず他の方法での債務整理を再検討しなければならないことも。
任意整理に必要な資料収集や計算、先方との交渉などは、弁護士や司法書士に依頼すれば専門家がすべて処理してくれます。
相談者は交渉の結果を聞いて、合意できるかどうかを判断するだけで良いのです。
一部の借金だけを選んで整理できるのも、任意整理の大きな特徴です。
例えば住宅ローンには抵当権が付いているので、債務整理をすると持ち家が競売にかけられる恐れがあります。しかし、整理先から外しておけばこうした心配は不要です。
また、借金に保証人がいる場合、保証人に取立てがいってしまう場合もありますが、こちらも整理先から外せば引き続き自分で対処することになるため、保証人に迷惑をかけることがありません。
自己破産や個人再生とは違い、任意整理では、持ち家や自動車をはじめ、残したい財産を手元に残すことができます。
前述のように、任意整理では一部の借金だけを選んで整理することができるので、現在支払っている住宅ローンや車のローンを任意整理の対象から外すことで、これら財産を維持できるのです。
絶対に手放したくない財産がある方には、任意整理がおすすめです。
家族や職場にバレずに借金を整理したい。そう考える方は多いでしょう。
任意整理なら、基本的に債権者との交渉なので、提出書類を用意する際に家族や職場に知られるリスクがほとんどありません。裁判所の判断も不要で、誰でも目を通せる官報に個人情報が載ることもなく、第三者に知られるリスクは低いといえます。
弁護士や司法書士などの専門家に依頼すれば、その時点で窓口が債務者本人から専門家に変わるので、債権者からの連絡・通知が自宅や職場に届くこともなくなります。
借金の延滞などが続き、激しい取立てや毎月自宅に届く請求書に怯えている人は、任意整理の手続きをすることで、こうした取り立てから逃れることができます。
弁護士や司法書士といった専門家は、任意整理の依頼を受けたら債権者側に「受任通知」を発送。受け取った債権者はその後、債務者に取立ての電話やDMを送ることが原則的にできなくなります。
取立ての停止により、債務者は平穏な生活を取り戻せるでしょう。
任意整理中は借金返済が一時的にストップするので、この間に生活を立て直すことを試みてください。
もちろん、弁護士や司法書士に支払う費用を貯めたり、支払いの原資を積み立てたりするなど、今後の準備をすることもできますね。
任意整理のデメリットは、大きく分けて以下の2点です。
他の債務整理手続きと同じように、任意整理をすることで信用情報機関の事故情報に登録されます。いわゆる「ブラックリストに載る」ということです。
ただし、信用情報を確認できる人はごく一部に限られるため、そこから家族や職場にばれる可能性はありません。
信用情報機関の事故情報に登録されている期間中は、新たにローンを組んだり、クレジットカードを作ったりすることが難しくなります。発行済みのクレジットカードによる新たな借り入れも同様です。
登録される期間は、債務整理の場合は全ての借金を返済し終えてから5年程度といわれています。
借り入れではなくキャッシュレス決済が目的なら、銀行が発行するデビットカードや、配偶者の家族カード、チャージ式のプリペイドカード類を選びましょう。
これらには事故情報が関係しないため、任意整理中でも新規発行も使用もできる場合がほとんどです。
比較的楽に、短期間で手続きが終わる任意整理ですが、どのケースでも適用となるわけではありません。
任意整理は「借金の返済をし続けながら生活を再建すること」を想定しているため、次のような人に向いていると言えるでしょう。
具体的には「借金額が300万円くらいまでの人」「パート・アルバイトではなく会社員や公務員として働いており、一定の収入が見込め、毎月の返済を確実に継続できる人」です(その人の収入や所有財産にもよります)。
もちろん、上記に当てはまらずとも任意整理ができる場合も多々あります。専門家に相談すれば、あなたの借金や日々の生活を確認した上で最適な債務整理方法を提案してくれます。
反対に、任意整理に向かない人のは次のような人です。
繰り返しますが、任意整理とは「借金を確実に返済するための計画を立て直す法的手続き」のことです。そもそも返す当てのない人は、全ての借金を清算する「自己破産」や、借金自体を圧縮する(減らす)「個人再生」の方が向いているかもしれません。
もちろんそれぞれにメリットとデメリット、適用条件があります。自己判断する前に、どの方法が良いか専門家に相談してみましょう。
どんな流れで任意整理が進む?もしも任意整理後に借金したくなったらどうする?
以下のページでは、それぞれの疑問について詳しく解説しています。
任意整理は、話し合いで借金を整理する方法。自分でも手続きできますが、個人が話し合いを持ちかけても金融機関は相手にしてくれません。弁護士など法律の専門家に依頼するのが一般的です。
弁護士と委任契約を締結して、相手方に受任通知が送られると督促や請求が止まります。債務の調査をして、過払い金の返還請求や任意整理案を提示して交渉。債権者の同意を得てから整理案に基づく返済をスタートします。流れの詳細や費用についてまとめました。
任意整理は、整理する対象の債務を自分で選べます。たとえば、複数あるクレジットカード会社や消費者金融の中から、金利が高いものだけを選んで整理することも可能。手元に残したい車や家などを整理対象から外せます。
任意整理手続きをすると、その後一定期間は、信用情報に記録されるため、各種ローンが組めなくなります。債務整理で家や車を手放してしまうと、しばらく手に入れるのが難しくなるため、整理する対象は慎重に検討しましょう。
任意整理後は、返済計画に従って返済を行っていくことになります。返済計画は、任意整理中の経済状況に合わせて作成するため、収入などに変化があった場合、支払いができなくなる可能性は否定できません。
任意整理後の返済遅れなどは基本的に認められず、2回分以上の支払い滞納をすると、一括返済を求められるのが一般的です。どうしても返済が出来なくなった場合は、他の債務の整理や個人再生、自己破産などの整理方法も検討が必要になるでしょう。
任意整理後、新たな借金はできません。個人信用情報上、いわゆるブラック状態になるからです。一般的な金融会社は、お金を貸してくれません。任意整理後にお金を貸してくれるところはヤミ金なので注意してください。
病気の治療で医療費が高額になった場合は、高額療養費制度を申請すれば、一定額以上の費用が払い戻されます。積立型の生命保険に加入している場合は、契約者貸付で積み立てた額の範囲内での借り入れが可能です。
任意整理は、弁護士と司法書士が扱えます。どちらに依頼すればいいか迷うかもしれません。弁護士と司法書士の違いは、取り扱い上限金額です。債務額が140万円をこえる場合は、司法書士では取り扱いができません。
費用面では、司法書士の方が安く設定されていることが多いです。訴訟がもつれた場合は弁護士に依頼することになりますが、任意整理で裁判になることはあまりありません。債務額や交渉力、相談しやすさで選ぶといいでしょう。
任意整理では、委任契約手続きをすると、債権者に受任通知が送付され、一旦請求がストップします。請求が止まると気持ちが落ち着くので、受任通知まではスピードが大切です。最終的な解決までは3~6ヶ月かかります。対応の早さはもちろん、根本的な問題解決力があり実績が豊富な弁護士事務所に依頼すると、安心して任せられるでしょう。東京で対応が早い弁護士事務所を紹介していますので、弁護士事務所選びの参考にしてください。
任意整理は、裁判所を通さずに、当事者間での話し合いによって行われる手続きです。裁判所の費用負担はありません。必要な費用は、依頼する弁護士・司法書士への報酬のみ。着手金と相談料、報酬金、減額報酬金がその内訳です。
任意整理の費用相場は10万円~20万円くらい。債権者からの請求がストップしている間に分割で支払えるので、現金の持ち合わせがなくても問題ありません。個人再生の場合は50~60万円、自己破産は50万円以上が相場です。
任意整理の成功事例を確認すると、手続き後の自分の生活がイメージしやすいです。たとえば、趣味やギャンブルでの出費がかさみ、350万円ほどの借金になってしまったケースでは、260万円減額に成功し、任意整理後2年弱での完済に成功しています。また、住宅ローンは残して他の借金を整理することで住まいを手放さずに済んだ事例も。任意整理後の返済計画をしっかりと立てることが成功のポイントです。成功事例をチェックしておきましょう。
任意整理を相談する法律事務所選びのポイントは、任意整理の実績が豊富かどうかです。債務整理は他にも方法があります。任意整理を多く取り扱っている事務所であれば、スムーズに手続きしてもらえるでしょう。また、「契約書締結前に無料で相談ができるか」「料金体系が明確か」「手続きのスケジュールを分かりやすく説明してくれるか」もチェックしたいポイント。総合的な対応ができるのは弁護士ですが、140万円以下なら司法書士も選択肢に入ります。
任意整理は、整理する借金を選べるため、車や家など、家族と共有している財産を処分する必要がないため、家族への影響はほとんどありません。家族の個人信用情報に記録が残ることもないため、家族のローン審査にも影響しません。ただし、専業主婦がローンを組む場合は配偶者の審査が行われます。また、「教育ローンが組めない」「奨学金の保証人になれない」ということから、子供の進学に影響するリスクがある点には注意が必要です。
任意整理は借金の支払い負担を現在より軽減する解決方法ですが、債務者・債権者の行動、任意整理のメリットが低いなど、任意整理できないケースは多岐に渡ります。任意整理ができない具体的なケースとその対処法をご紹介します。
信用情報機関情報によってブラックリストに名前掲載された場合、お金を借りるサービスは利用不可になります。任意整理の場合、登録される、されないの違いは何なのでしょうか。具体的な理由と信用情報機関についてご紹介します。
支払いが苦しくて任意整理を行い、信用情報機関によって名前がブラックリストに掲載された後、お金がなくて生活ができない場合キャッシングはできるのでしょうか?具体的な答えとその理由、またお金がない場合の対処法などをご紹介します。
任意整理の途中から個人再生へ切り替えることは可能ですが、それには一定の条件を満たす必要があり、いくつかの注意点があります。
任意整理から個人再生へ切り替えるにはどうすればいいのでしょうか。具体的な内容などをご紹介します。
任意整理は利息をカットするだけなので借金の元金は残り、支払いは継続するため一括返済して楽になりたい方は少なくありません。任意整理後の一括返済は可能なのでしょうか。任意整理後の一括返済でのメリットと注意点を紹介します。
延滞利息(遅延損害金)とは、返済日に支払いしなかった場合発生する賠償金やペナルティのことです。任意整理をすると延滞利息(遅延損害金)がカットされる理由と、遅延損害金を払っていても過払い金の請求可能なことについて紹介します。
任意整理中に弁護士に辞退されたら、速やかに別の弁護士に依頼することをおすすめします。弁護士が辞退すると債権者はどのように動くのか、自分はどうすべきかを詳しく解説します。また新しく依頼する前に、なぜ辞退されてしまったのか原因を確認しておきましょう。新しい弁護士にも同じ対応をすると、また辞退されることになるため、借金問題を早期に解決するためには、弁護士に依頼する際の注意事項をしっかり守りましょう。
任意整理に欠かせない信用情報の登録。任意整理とは国に認められた借金救済制度であり、合法的に借金問題を解決することが可能です。しかし、信用情報を登録することにはクレジットカードの利用や新規作成ができなくなったり、ローン・やキャッシングなどの借入もできなくなったりなど、さまざまな制限がついてきます。上記の他にも、携帯電話機種代を分割払いができなくなったり、奨学金の保証人になれなくなったりなど、日常に支障が出るリスクがあるのです。そこで、ここでは信用情報について詳しく解説していきます。信用情報に関する正しい知識を身につけて、任意整理を行いましょう。
学生時代、奨学金を利用したという方も多いでしょう。この奨学金は返済の義務がありますが、返済額が大きな負担としてのしかかってくることがあります。その場合、奨学金の返還を任意整理の対象とすることはできるものの、金利が低いことからあまり任意整理には向いていないといえます。
奨学金の返済が負担になっている場合には、任意整理を検討するよりも、減額返還制度や返還期限猶予制度などを利用する方が良いでしょう。こちらのページではさまざまな制度について紹介していますので、必要に応じて利用を検討してみてください。
任意整理中、支払いなどが厳しくキャリア決済を利用したいと考えることもあるでしょう。任意整理中でもキャリア決済を利用できることもありますが、キャリア決済はクレジットカードと同じようなものであることから利用はおすすめできません。さらに、キャリア決済が癖になると任意整理の計画に支障をきたす可能性もあります。
任意整理を行っている場合にキャリア決済を利用することにはさまざまなリスクがあることを認識し、「どうしても」のとき以外は利用しないという意識を持っておくことがおすすめです。
任意整理中の場合、基本的には教育ローンに申し込むことはできません。一方で、奨学金は子ども本人が教育費を借りる制度なため、保護者がブラックリスト状態でも申し込むことはできます。
ただし、任意整理中の保護者が、奨学金の連帯保証人になることはできないので注意してください。
奨学金を借りれば子どもの教育資金は確保できますが、子どもは学校の卒業後、数年、十数年にわたって奨学金を返済しなければなりません。任意整理中に教育ローンや奨学金の利用を考えているのであれば、速やかに専門家に相談しましょう。
家族が任意整理を代理で行うことは原則できません。ただし、家族が成年後見人になっている場合は、本人の代理で任意整理を行うことができます。
弁護士や司法書士に代理手続きを依頼することもできますが、本人が委託契約を結ばなくてはなりません。家族が代理で契約を結ぶことはできないので注意しましょう。
家族が任意整理の代わりにできることと言えば、借り入れの状況を整理することと返済計画を立てることです。まずは債務状況を整理したうえで、家族で解決できないときは専門家に相談してください。
任意整理では、債権者と債務者が司法書士や弁護士といった専門家を通して交渉し、借金の減額を図ります。対して、個人再生は裁判所を通しての手続きです。また、任意整理では対象となる債権者を選べますが、個人再生はすべての債権者が対象となります。
通常、何らかの理由で任意整理が難しい場合に個人再生を行うことになります。任意整理が難しいケースとしては、債務者が高齢や病気などで長期間に渡る返済が難しい、債権者が任意整理に応じてくれない、すでに差し押さえを受けているなどが挙げられます。
任意整理を行ったあとにカーリースを行うこと自体は可能です。しかし、車はリース会社に回収されてしまい、リース契約を途中で解約することになるので違約金が発生します。また、信用情報機関に事故情報が掲載されてしまう、といったデメリットがあることを理解しておきましょう。
任意整理のあとでカーリースの申し込みを行うこと自体は可能です。また、任意整理の際にリース会社を対象から除外しておくことで、カーリースの継続利用が可能です。
任意整理をおこなった場合、当該のクレジットカードは、すぐに使用できなくなります。「キャッシング枠だけ使用できない」などの措置はほとんど期待できなく、解約となるケースがほとんどです。また、当該クレジットカードに付随する家族カードやETCカードも解約となってしまいます。ただ、事故防止の観点からETCカードは、少し猶予が与えられるケースもあるようです。いずれにしても、クレジットカードは使用できませんので、支払い関係などは、別の方法に変更するなどの手続きが必要です。
任意整理を行った場合、クレジット機能が付いたETCカードは利用できなくなってしまいます。クレジットカードが解約されるため、ETCの支払いが不可能になるためです。カード会社を任意整理の対象にした場合、受任通知後すぐに使えなくなります。一方、任意整理の対象外であっても、カード会社が信用情報を確認した際に停止される可能性があります。もしETCカードが必要な場合、ETCパソカなど他の代替手段を利用しましょう。ただし、保証金や年会費が必要です。
任意整理は必ず成功するとは限らず、状況によっては失敗してしまうことがあります。例えば年収が少ない場合、返済能力がないとみなされて交渉に応じてもらえないかもしれません。また、借金の総額が少ない場合や、一度も返済していない場合も任意整理に失敗する可能性があります。任意整理を成功させるためには、弁護士や司法書士へ相談することが重要です。もし失敗した時は、個人再生や自己破産などの手段も検討しましょう。
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